ニュースリリース
ドン底で発見した商売の原点。「お金はありがとうの引換券」
漠然とした夢とうぬぼれだけで起業しちゃったんです。高齢者向けに中古PC販売やIT講習会をやるんだと。でも最初は全然ダメで。親戚縁者に頭を下げて買ってもらっても焦りでつい応対が雑になる。「これだけのお金のために、ここまでしてあげないといけないのか」と。目先のお金に追われて、目の前のお客さんが見えていなかったんですね。
私の目を覚ましてくれたのは71歳のご婦人でした。もうあきらめて就職しよういう頃、PC購入と設置を頼まれて自宅にお邪魔したんです。時間があり余っていたせいか、ふと無心になれた。趣味はガーデニングだと聞いて「このアイコンを大きくしておきますね」「ショートカットもつけときましょう」なんて話をして、紙に全部まとめて。そう頼まれたわけじゃないですよ。でも自然と「この人のために」と仕事ができた。夕方5時から深夜11時まで作業して代金は3万円。なのに帰りがけに別の封筒を渡されました。中には1万円とお手紙が。「遅くまでありがとう、これで家族に何かおいしいものでも食べさせて」。そのご婦人からの紹介がきっかけで、どんどんお客さんも増えていきました。
その時、思い知りました。私が仕事をするのは目の前の人を助けることで「ありがとう」をいただくため。お金はその後についてくるもの。この気づきは、私の商売の原点になりました。不思議なことに、これを忘れかけると経営が露骨に傾くんです。だから何度も復唱するんですよ。「お金はありがとうの引換券」なんだと。

━ お金を受け取る時の気持ち、変わった?
以前は、自分の生活のためのお金。今は、みんなのため、社会をよくするためのお金という気持ちです。きれいごとだと言われるかもしれませんが、だったら「あなたは汚れているんですか」と言い返したいですね。
アントレ 2014年冬号