ニュースリリース
地域密着PC店展開
九州を中心に中古パソコンの販売店「パソコン市場」を25店舗展開し、本県では都城市に店を構える。目指しているのは、単にパソコンを格安で販売することではない。初心者が気軽に利用できて、パソコンに関わるさまざまな困りごとについて解決するサービスを提供できる地域密着の店だ。
週の半分は店を回って店舗のレイアウトや商品構成などを点検。「これでは初心者は店に入らない」「何を売りにしているのか客に伝わらない」と現場に改善を促す。1号店の出店時から掲げている店のコンセプトは「初心者のためのパソコンショップ」。会社の方針を社員に浸透させるため足しげく店に通う。
日向市出身。日向工業高校から進んだ熊本工業大(現崇城大)では電気工学を学んだ。当時からモノ売りに興味があり、1989年に地物と大手スーパー・寿屋(熊本市)に入社。ワープロ販売を担当し、売上額は社内トップだったという。だが数年で会社が経営不振となり、パソコン販売大手のアプライド(福岡市)に転職。主任から始め、役員まで登用されたものの、高齢者への販売などについて会社の方針とズレが生じ、12年勤めて退社。以前から独立への思いを持っていたことから、2003年夏に36歳で会社を1人で設立した。
ただ、最初にできたのは中古パソコンを知人や親戚にお願いして買ってもらうくらい。初めての給料として手元に残ったのはわずか数万円だった。妻と子供3人を養わなければならず、再就職を考え始めた頃に公民館でIT講習会を開いてほしいとの依頼を受けた。
そこに参加していた年配の女性から自宅のパソコン設置を頼まれ訪問。使い方を教えたり、パソコンを使いやすいように設定したりと5、6時間を費やして、いざ帰ろうとすると「家族とおいしいものでも食べて」と代金とは別に1万円の謝礼を手渡された。
この経験が商売の原点を再確認するきっかけとなった。「目の前の人を助け、喜んでもらうために一生懸命仕事をする。お金はその後についてくる」。今ではこの思いを経営理念にも掲げる。
年配女性の依頼をきっかけに仕事もつながり始めた。パソコンに関する不安や悩みの相談を受けながら、中古パソコンも販売して1件3万円。(パソコン代込み)。この方法で顧客基盤をつくり、創業半年で福岡市に1号店を開業した。客の一人だった新聞記者が店を記事で紹介してくれたことで、パソコン初心者の中高年が多く足を運ぶように。客の7割を50歳以上の初心者が占めた。その後も新聞広告を出しながら年間2、3店舗ずつ出店し、08年度には20店舗以上に拡大。売り上げも右肩上がりで11年度には40億近くまで伸びた。
しかし、環境の変化は突然訪れた。パソコンの基本ソフト「Windows XP」のサポート終了に伴う買い替え需要増の反動減などで、14年度の売り上げは前年度の8割に減少。「驚くほど急激だった」
経営を立て直すために広告宣伝費や人件費を削減。商品を売るだけの「モノ売り」から「コト売り」を中心とした店舗への転換を始めた。「コト売り」とは顧客目線で何かの目的を達成させるために提供するサービス。パソコンの修理や出張設定、使い方のレッスン、相談など。そんな付随サービスの需要が今は増えつつある。
「これからは一貫性のモノ売りではやっていけない。客とつながってファンを作っていくことが大切」。理想はデジタルに関する不安などを気軽に相談できる、初心者にも身近な店だ。5万人に1店舗、全国2000店舗開設を目標に走り続けている。
2016年08月18日 宮崎日日新聞 (記者:高森千絵)